チェスター・コパーポットの逆襲

映画、本、ざれごと、好きな事を好きなだけ。

バイバイ、ヴァンプ バイバイ、カンヌ

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「バイバイ、ヴァンプ」
という映画が

「同性愛者を差別している」と、物議を醸している。

 

ざっと調べてみると

どうやら、本作が大きく問題になっている部分は

異性愛が、ヴァンパイアに咬まれると

同性愛者になってしまうという設定と

同性愛者差別と、とれるような不適切なセリフが多々ある事らしい。

 

そして、今一部で、映画の公開中止を求め

署名活動が行われている。

 

僕は、この映画を見ていない。

見る気もしない。

「いつもの下らない。邦画の一つだろう」

と予告を見て思った。これからも 多分、見ない。

まぁ制作者サイドからしたら

「まず見てから、ブツブツ物議をやってくれ!」

てなもんだろうが、それでこそ

制作者サイドの思う壺じゃあござんせんか。

 

今回、書きたい事は

「バイバイ、ヴァンプ」が差別に当たる

か、どうかの検証や、考えではなく

文芸、アート、音楽、そして映画を

非常に愛する僕らからすれば

深く考える必要があるもっと本質的な問題だ。

 

まず本作は、ホラーコメディ作品であり

「この映画はフィクションです。

実在の人物や団体などとは関係ありま千円」という

毎度お馴染みの、いつものあれで

詰まり、特定の誰かをモデルにしている訳ではないようだ。

 

で、映画だけでなく、他の多くの表現方法の中でも

このコメディ(お笑い)ホラー、このジャンルが特に

差別表現と切り離すのが超難しい・・・。

と言うより無理

 

例えば、僕も大好きなお笑いタレントのネタで挙げるなら

ハゲネタ、デブネタ、ブサイクネタ

いくらでも差別として認定できる。

 本人たちは、それでこそ、ハゲる程

もの凄い苦労をしてネタを作り、訓練して

それでお客様に楽しく笑って頂き

時に、生きる希望を与え

お金を頂き、家賃、光熱費を払っている。

・・・で、全国のハゲさんは、デブさん

そのタレントたちの芸のせいで

普段の生活の中、差別され

時に死にたいような気持ちになっている事だろう。

 

あと、ボケ芸に対してのツッコミはどうだ?

あれは、暴力の肯定をしていないか?

いじめの温床になっていないか?

制作者サイドは

「あれは、愛があるんだよ。考えて見て貰えば

プロがプロにやっている事だと解るし

それに、マネしないで下さい。大変危険ですって入れるからいいよ。」

と答えるだろうが・・・それなら「バイバイ、ヴァンプ」

「公開中止、バイバイお客様」するのではなく

「差別的な表現と、とられるようなものが、含まれますが

決してマネしないで下さい。制作者としては決して、悪意はありません」

で十分ではないのか?

・・・まぁ映画ファンからすれば

そんな注意書きが、出る映画なんか白けてしまって、見る気はしないが・・・

 

例えば

13日の金曜日2020~殺戮のオリンピック」

※これは、作りものです。ホッケーマスクを被った殺人鬼が

お・も・て・な・し」と叫びながら大暴れ致しますが

特定の競技を陥れるような意図はなく

ましてや、オリンピック自体を妨害するような

政治的意図は全くございません。悪しからずご了承下さいませ。

 

アルマゲドン2020」

※この映画は、地震津波、火災など

大変ショッキングな映像が上映開始から45分に1回

1:45に6回、1:50に35回、ラストには隕石衝突による津波

全て作りものとはいえ含まれています。予めご了承下さいませ。

 

やっぱり、誰が、見るんだ・・・

まぁ今の邦画を見る限り、こんなんでも

キャストが推しメンなら誰かは見るか・・・。

 

話を戻す

もし今回、「バイバイ、ヴァンプ」が公開中止に至った場合

今後もそのような中止は、しばらく、いやずっとこの先

行われるかも知れない。

「これは?差別ではないのか?誰かが傷つくのではないのか?

不倫、薬物依存、反社会的勢力に、関係したものだ!

間違いない!これもバイバイしてもらった方がいい!」

 いう一定の声に、制作側が委縮し続けて。

 

そして、遂に「バイバイ、ヴァンプ」の制作者を含め

映像クリエイターたちは、

「バイバイ・映画!」と爆発し「死なばもろとも・・・」と一斉に反撃を開始。

 「この作品だって

埼玉県民を大いに差別しているではないか?

このコメディ映画のせいで、自殺した埼玉県人を我々は知っている!」

 

「それなら、これからは恋愛映画は、すべて同性愛者を登場させるべきだ!

登場人物が多い映画で、みんな異性愛者というのは、絶対に不自然だし

これこそ同性愛者への排斥運動ではないか!?」

 

「待てよ。ヤクザ映画は?

ヤクザという言葉自体、なんだか

お客様に、反社会的勢力にかっこいいイメージを

持たせてしまう恐れがあり、大いに不適切ではないのか?

反社会的勢力映画ときっちり表現すべきだ!

あと、ハンシャと略すのもダメだ!

ハンシャ=反射=頭髪の薄い人の頭を連想させる

おハゲ様への差別だ!

いや、そもそもそんな暴力映画は、制作すべきでない!」

 

「常々感じていたが、犯罪作品、ミステリーなんてジャンルは

中には実際の事件を題材にしているものも

多く、それでこそ被害者たちの心を

また深く傷つけている事は間違いな~い!!

何より、人が死ぬ話を娯楽として

扱うなんて、不謹慎極まりない!!非道すぎる!!!

こんな作品は原作小説もファッキン発禁処分だ!

こんなものは、サイコパス製造機だ!

あれも、これも中止だぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「そして、一番ダメなのは、政治を題材にした映画だ!

素人が政治を揶揄するなど、なんて恐ろしい!

絶対ダメだ!本来、政治を語っていいのは

有権者が選んだ政治家と専門家だけなはずだ!

貧困、虐待、いじめ、そんなものはプロが

今この時も一生懸命、打開策を作り上げている途中なのだ!

それに茶々を入れるような事なんて言語道断だ!

所詮、物語制作なんて、お遊びだろうが!!

今後は、風評被害は広げるような作品や

万引きを擁護するようなタイトルをつけるなぁ!!!」

 

とこのように、勝者なき、終わりなき

誠に不毛な内戦(注意、不毛と書いたがハゲ差別ではない)

を始め出すかも知れない。

 

なんて事になれば。エンターテイメントに限らず

重ねて言うが、文芸、音楽、アートすべてにおいて

物語など作れるのだろうか?

 

断っておくが

僕は、性差別する奴なんか

大嫌いである。

もし、友人、知り合い、親戚に

差別主義者がいればすぐに縁を切る。

 

もちろん、同性愛をテーマにした作品も大好きで

「ヘドウィグアンドアングリーインチ」

「チョコレート・ドーナツ」

きのう何食べた?などは

何度も観て、物凄く感動した作品だ。

 

そして、今回の「バイバイ、ヴァンプ」を含め

すべての作品に対して賛否両論あるべきだと

思うし、抗議も当然あればいいと思う。

 

しかし、大前提として

「この世には、誰も傷つけない作品など何もないのだよ」

いや、きっとあの世にもないだろう。

という事を忘れてはならない。

 

誰かを傷付けても

表現の自由が守ろうとしているものは

何なのか?それを

ゆっくりじっくりコトコト調べて考えて欲しい。

残念ながら、多くのバカな大人達は

それを考えずに、生きてきた。

是非、それをネットで調べるだけでなく

身銭を切って、作品に触れて、時間をかけて、

大いに影響を受けて、時にがっかりしながら

リテラシーを鍛えて欲しい。

そして、人に会い、得た知識をセッションして

経験に変えて欲しい。

 

「でも・・・自分なんかバカだから・・・」

バカでケッコウ。コケコッコー。

心配しなくても、何を隠そう

僕を含め、人類のほとんどはバカなのだ。ハハハ。

 

大事なのは、バカはバカなりに

背伸びしてでも、言葉を覚え使い合い

考えを鍛え、成長する事だ。

 

そして、先ほど半分冗談、半分本気で書いた。

不毛な内戦(注意、重ねてハゲ差別ではない)

が繰り広げられた先に

誰が喜び続け、大きくバランスを失い

世にも恐ろしい者になっていくか?

 

もう賢明な読者諸君なら、お気付きだろう?

 

そう権力者なのだ。

それは、政治家に限った事ではない。

企業、教育機関、その他、すべての意思決定層だ。

 

毒にも薬にもならぬ

当たり障りのない

「ありのままのあなたがいいよ」と、のたまう

青春応援元気作品も結構だが

 

権力の暴走や

追い詰められた個人の暴走に、待ったをかける為には

 時に、「エグくてグロくて差別的で

痛い大毒を含んだプロテスト作品」これが絶対必要なのだ!

 

重ねて、抗議、討論、大いに結構。

しかし

いわゆる論破が、最終目的の下らない口撃は止めて

相手の立場を熟考した

ウイットに富んだアプローチで対話を行い

どうせ死んでしまう人生を戦い続けよう。

それが、人間が物語を作り続けなければならない

為の一つの目的である。

 

本日も最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。

こんな世界で、それでは、またこんど!