チェスター・コパーポットの逆襲

映画、本、ざれごと、好きな事を好きなだけ。

天才かもしれない。ヨシタケ・シンスケ作「りんごかもしれない」を読んで

こんにちは。ショウタロウです。

 

僕には中学の頃

どうにも自分の部屋を片付けられない友人A君がいまして

本、漫画、ゲーム、ガンプラ、服、などが

彼の部屋には散乱していて

そこに、決して人には、なつかない白猫(名前は、まだなかった)

が機嫌悪く居座り、さらにそれが、部屋を荒らすので

部屋は、もう混沌の極みと化していました。

 

問題は、そんなカオスな部屋なのに

そこは、僕らの憩いの溜まり場になっていることで

度々、僕たちは、A君に

「少し片付けをしてくれ、当然、僕たちも手伝うから」

と抗議に近い、提案をするのですが

めんどくさそうに、A君は黙秘を続けるのです。

 

ある日、そんなA君が僕らに

自分が片付けをしない理由

いや、正確に言うと片付ける事が出来ない理由

語りだしたのです。

 

「俺がここまでナマケモノなのは

それは、俺がどこかの王族の末裔かもしれない。ということだ。

俺は、赤ん坊の頃になんらかの理由で、遠いこの国に逃がされ生活しているが

俺の体に流れるのは、王族の血。

その血が、俺をこんな自分では何もできない性格にしているかもしれない。

もっと、王族にはすべき事があるかもしれないからな。

そして俺には、7人のまだ見ぬ召使がいて

俺を探しているかもしれない。

その7人は、王族である俺の身の回りの事を

全てやってくれて、しかもそれに使命を感じているかもしれない。

だから、俺は、部屋は片付けない事にした。

何故なら

それは俺の王族たる宿命7人の使命を奪うことになるかもしれないからだ」

と満足そうに夢多き「かもしれない」話しを終えるA君。

 

すると、今までずっとこの片付け問題には口を挟まなかった

普段は無口の友人C君が口を開いて

「お前は、絶対王族じゃない。俺には分かる。

何故ならお前からは王族の気品みたいなものを

全く感じないからだ。

7人の召使の仕事を奪う事になる。そんな事以前に

お前の王族の気品があれば、そもそもこんな部屋にはいられないはずだ。

そんな、ざれごとより、こんなホコリとゴミだらけの部屋にいたら

お前、その内、病気になるかもしれないぜ」

 

「・・・気品のない王族だっているかもしれないだろ

俺は、気品のない王族かもしれないんだよ!」A君。

 

すかさずC君。

「なら、そんな気品のないお前の一族はとうに滅んだかもしれない。

もう召使はお前を迎えには来ないかもしれない。

早く諦めて部屋を片付けたほうがいいかもしれない。

 

こんな楽しい「かもしれない」問答を

ふと思い出させてくれたこの作品。

 

「りんごかもしれない」

ヨシタケ・シンスケ作 ブロンズ新社

 

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www.bronze.co.jp

 

 ざっとストーリーを。

 

主人公の男の子が

家に帰ってくると

 

テーブルの上に赤いリンゴがひとつ。

 

男の子はつぶやく

「あっリンゴだ。

・・・いや、まてよ

あれは、リンゴの姿をした

全くべつのものかもしれない・・・」

 

本当は、大きなサクランボかもしれない。

 

いや、それとも何かのたまごかもしれない。

 

ひよっとしたら、赤いネコが丸まっているのかもしれない。

 

もしかしたら、赤い青りんごかもしれない。

 

こうして

ニュートンもびっくりの

少年哲学の道は果てしなく続く。

 

読んで感じた事。

 

楽しい、楽しいかもしれない運転。

 

僕も小さな頃から

この「かもしれない」を沢山してきました。

 

小学校のグラウンドの片隅に

置かれた謎の薄汚れた箱。

「百葉箱」

先生たちは、

「あの箱は理科の実験に使うのよ・・・」

なんて、ごまかしていたけれど

「・・・ちがう。

あの箱は、夜な夜な大人達だけで行う

謎の儀式に使うのかもしれない。

大人達は、夜集まって

子供をあの箱の中に閉じ込めて、

アルト笛を吹きながら

その回りをぐるぐる

明け方まで回るのかもしれない。」

 

僕らの遊び場になっていた

市が運営する大きな団地。

 

そこは、僕らのラビリンス(迷宮)

長い階段を登ったり下がったり

そこで、僕らはかくれんぼ、鬼ごっこ

するんですが、そのラビリンスには

踏み入れてはいけないゾーンがあって

そこには

「顔がみのもんたで、体が

みのタウロスが住んでいて

遊んでいる僕らを襲ってくるかもしれない」

 

あとは、森にいる緑の猿人「へにそーる」が・・・

 

なんて、わくわく、どきどき

かもしれない恐怖劇場を毎日開催していました。

 

皆様も是非、本作を読んで

忘れていたあの頃の

「あの子は、僕のことを好きなのかもしれない・・・」

「もうあなたは、来ないかもしれない・・・」

なんて感じの

「淡く、ほろ苦い、かもしれない」

を思い出してみて下さいませ。

 

本日も最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。

また、次回もお付き合い下さいませ。

 

もうあなたは、当ブログから離れられないかもしれない。