チェスター・コパーポットの逆襲

映画、本、ざれごと、好きな事を好きなだけ。

塀の中のおいしい生活。映画「刑務所の中」を見て。

こんにちは。ショウタロウです。

 

映画、小説、コミック、色んなジャンルで

描かれる「刑務所を舞台とした作品」って

名作が多いですよね。

 

無実の罪で、囚われたものが

こそこそ、そわそわ、わくわくしながら

看守を出し抜き最後には、自由を手に入れる脱出劇や

 

受刑者が大きな罪を背負い、罰を受けながら

「更正とはなんだ?」と

一生を懸けて見詰め抜く哲学的な作品。

 

うーん。やはりどちらのアプローチも

とても興味深い。

 

そして、今回ご紹介したい作品は

そんな数ある刑務所作品の中でも

脱出劇でもないし、重苦しくもない。

 

あえてテーマを言うなら

人間が反省する事=感謝する事。

感謝する事=喜ぶ事。

喜ぶ事=食べる事。

食べる事=生きる事。

なんて事をしみじみ考えさせられ

そして、いちいち笑える。

他に類を見ない作品がこちら。

 

映画刑務所の中

主演 山崎努 2002年 崔洋一監督

f:id:kikuchiyokun:20191108095808j:plain

 

オチバレなしで、ざっとストーリーを

 

ガンマニアの初老の男、ハナワ

趣味が高じて

とうとうモノホンのガンに手を出し

 

「銃砲刀剣類不法所持」と「火薬類取締法違反」

で懲役3年を受け

北海道の刑務所に収監される。

 

そんなハナワが送る

長く厳しいはずの極寒の牢獄生活で

ある日、ハナワはつぶやいた。

 

「悪事を働いたのに
こう毎日毎日、忘れもせずに飯をくれるもんだ・・・

こんなんじゃあ、張り合いがありゃしない
まぁ、しかし
この美味い麦飯だけは止められん・・・

 

甘く煮た金時豆
大きな肉が入った春雨スープ
牛丼、エビチリ、ヒレカツ、アジフライ、茶わん蒸し。
コッペパンにはさんで食べるマーガリン小倉。
月に一度の映画鑑賞とアルフォートと缶コーラ。
正月三が日にでるスペシャルメニュー。

 

 ハナワはまた、つぶやく

「あぁ・・・充実してる・・・」

 

ハナワが訪れた刑務所の中

厳格な規律と、重い鉄の扉と
美味い飯で出来ていた。

 

見て感じた事。


むむむ。
「務所の中では、クサイ飯を食わされる」
では、なかったのでしょうか?

 

しかし、よく考えてみると

 

塀の外とは違い

毎日の労働基準法に沿った労働時間と
完全週休2日制。

 

そして
朝昼晩、必ず決まった時間に取る
適量で栄養バランスの取れた食事。

 

こりゃ美味くない訳がないか。
と思いますね。

 

当然、塀の中では娯楽や自由は
厳しく制限されているでしょうから
まだまだ欲望元気な若い内は、飯が美味いだけでは

きっついでしょうが

さて、年を取った受刑者はどうでしょうか?

 

規則正しい生活と
同じ境遇の仲間と
ちゃんとしたご飯。

 

ひょっとしたら、歳を取れば受刑者に限らず

人間みな、これ以上に望むものは無いのかも知れません。

 

それに刑期を勤め上げても、働き口がなく
再犯を繰り返して
温かい飯が食える塀の中
何度も戻るうちに、老いていく受刑者も
少なくないと聞きます。

 

名作。「ショーシャンクの空」のセリフに出てくる。

「最初は憎む。だんだん慣れてくる。

時間がたつと頼るようになっちまう。それが刑務所慣れってやつさ」

というやつです。

 

「死刑になりたかった・・・」
とまでは行かなくても

「あの飯をまた食いたかった・・・」
という動機で犯罪に手を染め続ける人たちは
いるのでしょう。

 

ロシアの有名な絶望先生ドストエフスキーは言いました。
「ある社会の文明の発達の度合いは

刑務所に入ってみることでわかる。」

 

僕らは、罪を犯した人々の反省と
その人々の人間らしい日々を
どう見つめていくべきでしょうか?

是非、アルフォートを食べながら

本作を見てそんな事をもぐもぐ考えてみて下さい。

 

そして、最後に質問です。

「皆さんは自分たちがいる場所が
塀の外なのか
塀の中なのか

時々、判らなくなる事はありませんか?」

 

本日も最後まで読んで読んで頂き誠にありがとうございます。

また次回もお付き合い下さいませ。